●プリント基板の最終製造工程の外形加工においてVカット加工と呼ばれる工程があります。Vカット加工とは基板の表裏に上下より相対したV形状の溝加工をする事であり、基板への部品実装後に小割りする際の補助としてのV溝です。加工自体はV形状をしたダイヤモンドカッターを高速で回転させ、基板上を切削加工するものです。
プリント基板の歴史の中で紙フェノール材が主力として製造されている時代にプレス打ち抜きによるミシン目に変わる工法としてVカット加工が生まれ、現在の基板製造の中では片面板から多層板まで標準工程として成り立っています。
基板製造の合理化と実装後の基板の簡易分割の為に生まれたこの工程も現在ではファイン化が進む基板製造の中でVカットの位置、深さ共にシビアな精度要求をされるに至っています。
そのような中でファイン化する基板に対応するVカットマシンとしては、量産型Vカットマシンと、多品種対応型Vカットマシンがあります。
どちらの機種も現在の市場要求に対応するべく高精度、高品質を実現するVカットマシンですが、使用する工場の生産体系により選択し使用されている現状です。
●はじめにPVD-550A型デュアルVカットマシンを紹します。この装置の概要は加工するワークを搬送ベルトにて送材し、回転する上下のカッターの間を通過させることによりV溝を形成します。カッター自体は上面加工用2枚と下面加工用2枚の計4枚が装備され、装置内をワークが搬送されることで2本のVカット加工が可能となります。
装置には投入機、受取機が標準装備されており、投入機に積載されたワークを上面より0.5秒に一枚ずつ投入し、加工装置を連続で通過及びVカット加工を施しその後受取機に積載されます。
この装置の最大の特徴はスピードであります。投入装置より0.5秒に一枚ずつ投入されたワークを40m/minの送りコンベアにて加工部分に搬送され、回転するダイヤモンドカッターによりV溝が形成されます。投入装置への積み込み量はワーク板厚が1.6tの場合に250枚積載可能であり、この250枚に2本のVカット加工を施すのに要する時間はおよそ2分です。(オプションとして1.6Tのワークを最大1000枚積み込み可能な投入装置もあります。)
基板へのVカット加工の場合、1枚のワークに対してVカット本数が複数本となる場合がほとんどであります。縦横合わせて平均4本から10本程度となる。(多い物では40本などと言う物もあります。)このPVD-550A型Vカットマシンでは前述の通り一工程で2本のVカット加工となるため、複数本に及ぶ場合はその都度装置のセット変更を行います。
このセット段取りに時間を要すほど生産量は上がらない。このためPVD型Vカットマシンではこのセット時間短縮のため、全てのセットを自動化にすると共に、タッチパネル制御のサーボシステムの採用でだれでも簡単に、しかも素早くセット段取りが出来ることを実現した。Vカット加工の装置セット項目としてはワーク寸法、Vカット位置(2本)、ワーク板厚及びVカット残厚などですが全ての入力を行い装置セットが完了するまで、およそ1分程度である。また、データの保管やパソコンからの通信も可能であり、セット変更に伴う煩わしさは皆無となりました。
加工部分ではワークを確実に押さえることが高精度に加工する条件となる。このためPVD-550A型Vカットマシンでは加工する板厚を現物に合わせた自動セットを行います。
現状の基板は公称の板厚と実測に違いがある場合があり、数値入力などで公称板厚でのセットを行うと、確実にワークを押さえるという行為に不具合が出る場合があります。
PVD型Vカットマシンではこのため加工前の現物を一度装置内へ流すことにより、搬送ベルトがこの現物の板厚に適した押さえを自動でセットするようにしました。この機構の採用でスピードを重視する装置でも高精度な加工が実現できました。
●現在のVカットマシンのユーザーへの導入の現状はこのスピードを重視したベルト搬送式がほとんどです。しかしながら基板製造の生産体系が徐々に量産ロット化から多品種少量化となってきていることから最近ではMVC-630C型マルチVカット・マークIIIが注目を浴びています。
加工されたワークはワーク積載部に複数枚同時に積載されます。この装置の最大の特徴は無人、省人化であります。前述の通りワーク投入部に積載されたワークを自動的に加工部へ移載し、入力データに基づきまず始めに横方向(X方向)のVカット加工を順番に繰り返す。加工終了後は自動的にワーク90度反転させ再度縦方向(Y方向)のVカット加工を順番に繰り返す。全ての加工終了後、ワークを自動排出し積載します。この動作をワークが無くなるまで繰り返すことで全ての加工が終了します。
今までのVカットマシンは加工本数が複数本となる度に装置のセット変更が必要でした。このセット変更が自動簡略化されても、作業員が装置を操作するため、無人化にはならない。現在の製造現場では一人で複数台の装置を動かすことが必需となっており、注目を浴びている現状はこのようなことからである。
MVC-630C型マルチVカット・マークIIIはこのほかにも魅力のある機能が追加されている。ワーク投入部は当然の事ながら回路形成の終了した至る所にも穴の空いているワークが積載される。このため今までのいろいろな装置では穴の空いていない部分を探し、この部分に吸着パットをセットするという非常に煩わしい作業がありました。
MVC-630Cではこの煩わしい作業を取り除くため、ショーダテクトロン独自の開発によるテクトロンパットを採用した。このテクトロンパットは穴あき基板のどの部分を吸着しても確実にワークを吸着させなおかつ2枚吸着(2枚吊り)は発生しない。このため投入部の装置セットは非常に簡単となっています。
今後の動向としては基板上へのVカット加工精度がさらに高精度な物が要求されると思われます。現在のVカットの加工基準はほとんどが基板端面を基準にしている。基板端面の仕上がり状態もあるが、基板の回路形成が日増しに微細に変わりつつある中で、基板端面を基準にしての加工では限界がある。このような中で開発した装置がMVC-630Cです。この装置は装置内部にCCDカメラを搭載し、加工基準を基板上の基準マークあるいは基準穴としている。現在の回路形成が基準マークや基準穴を利用して製作されていることは、Vカット加工もこの基準を利用しない限り、配線パターンとのマッチングに限界があります。MVC-630Cはこのようなことから開発された装置です。
装置概略は、投入積載部から加工ステーションに移載された後、ワーク両端のマークあるいは穴をCCDカメラが検出します。
この2点を結ぶ仮想線とVカッターが走行する線とを平行にするため、ワークを保持しているチャッキング爪がY方向に動き、補正を行う。補正終了後は横方向(X方向)の入力してある全てのVカットを行う。加工終了後はワークを90度反転させ、再度同様のカメラ検出からθ補正を行い、縦方向(Y方向)の入力してある全てのVカット加工を行う。全加工終了後はワーク積載部へ排出されます。
補正を各ワーク毎に行うため、同時に複数枚の加工は出来ず、1枚ずつの加工となる。このためこのMVC-630Cを使用する場合には面付けのボード基板にてVカット加工することを推奨します。
通常のVカット加工の場合、面付けボードからプレスあるいはルーターにて各1枚のワークに仕上げます。この後Vカット加工を端面基準で行いますが、この工程を逆にすることで高精度なVカットが生産量を落とすことなく実現出来ることとなります。また、ワーク外形をプレスで行う工程では面付けボードから短冊状にシャーリングで切断する工程があります。
この工程もMVC-630Cを利用することにより、全Vカット加工終了後に短冊切断加工も可能です。工程の簡素化と今後の品質向上のために検討する価値は充分にあると思われます。
●いずれにしてもVカット加工については基板製造上の最終工程であり、この工程での不良発生は最大限避けなければなりません。ここに2機種を紹介しましたが、どの機種も基板製造現場に限りなく役に立てる装置となっています。